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真空成型マメ知識

真空成型トレーとは?製品事例や真空成型のメリット、見積り依頼時の注意点

2022.03.18 2022.03.28
トレー

「真空成型」とは、温め柔らかくしたプラスチックを金型に合わせて真空吸引して成型する加工法で、トレーやパッケージに広く使われています。今回は、真空成型トレーの特徴や事例、使用可能な素材やメリットのほか、工場や製作所に真空形成トレーを依頼する際の見積り時の注意点なども合わせてご紹介します。

目次

真空成型(真空成形)とは?

真空成型とは、加熱して軟化させたプラスチックシートを金型に合わせ、金型にあいている微小な孔からシートと金型の隙間の空気を吸い込み、真空状態にして密着、冷却硬化することで形状を作り出す加工法です。

 

多くのプラスチック製品は「射出成型(しゃしゅつせいけい)」という、溶かしたプラスチックを金型に注入し固める方法で成型されますが、A4サイズ程度の製品をつくる場合は金型製作に約40日、費用は約180万円ほどします。一方、真空成型は成型圧力が低く、金型に金属以外の材料(樹脂など)を使用でき、凸型または凹型のどちらか片側だけの金型を作れば成型できるため、金型製作期間が短くコストが安いことが特徴です

また、射出成型は1個成型するのに30秒程かかりますが、真空成型の場合は1個あたり20秒ほどで成型できます。

 

真空成型トレーとは?

真空成型で生産される「真空成型トレー」は、電子部品用/精密機器用/注射器用/車載部品用/食品用などあらゆるジャンルの包装容器やトレーとして使用されています。

真空成型トレーは、他の成型方法に比べ初期費用が安くスピーディーに仕上がるため、

  • 低コスト・短納期
  • 小ロット・多品種

でトレーを生産したい方におすすめです。

真空成型トレーの製品事例

真空成型トレーは、食品用農業資材電子部品・精密機器・医療用品化粧品関連などのあらゆる分野で、梱包用、輸送用、納品用、保管用などの幅広い用途に使用されています。

実際の製品事例を見ていきましょう。

食品用トレーの事例

画像引用元:株式会社吾嬬製作所双和プラスチックス工業株式会社株式会社朝日化成

 

真空成型の食品トレーは、食品の形や大きさに合わせて見栄えよく収納性が高いトレーを製作することが可能です。また、汁物などの密閉性が必要な容器や、電子レンジでの温めが必要なお弁当容器にも使用されています

お弁当やオードブル、おせち料理などのトレー/納豆や卵のパック/汁物用容器/洋菓子や和菓子などのトレー/冷凍食品用トレー/ドリンクカップ容器/など

農業用トレーの事例

画像引用元:株式会社吾嬬製作所昭和有機株式会社矢野紙工包材の蔵

 

真空成型の農業用トレーは、梱包・物流用トレーのほか、野菜や果物などの栽培用トレーとしても広く普及しています。

栽培用トレーは植物の根の張り方や発芽状況などに合わせて根張りの良い形状やマス数でトレーを製作することもできます。

農産物流通用トレー/栽培用トレー/水耕栽培用水受けトレー/野菜移植機用トレー/地這栽培果実の成育用台座/緩衝トレーなど

工業用部品・電子部品・精密機器用・医療用品トレーの事例

画像引用元:株式会社吾嬬製作所三甲株式会社新江州株式会社柏木モールド

 

電子部品や精密機器、小型部品は非常に軽量で繊細です。一方、工業製品の部品には重量があり、かつ鋭利なものもあります。そのため、製品の保護、製品の固定化、製品に対しての強度などを十分に考慮する必要があります。

 

電子部品用トレーや工業用トレーには、輸送中に発生する内容物とトレーの擦れによる削れカスを発生しにくくする超耐摩耗素材を使用したり、静電気による異物の付着も、帯電防止処理の施されている素材を選ぶことで対策が可能です。

また、自動車部品や建設機材などの大型部品の収納にも適しており、保護と衝撃に対する緩衝材としても使用されています。

 

さらに、トレーはただ何かを運ぶだけではありません。

  • 組み立て順に部品を配置する
  • 同時に使用する部品を一度に供給する
  • スタッキングできることで、運搬を容易にする
  • スタッキングできないようにすることで、部品や生産工程の間違いを防ぐ
  • 鋭利な部品や、繊細な部品を保護する
  • 一定の入り数のトレーを使用し、数量管理を簡易化する

など、トレーを使用する場面を想定して設計することで、現場での作業効率をUPさせ、生産コストの削減も期待できます。

電子部品用トレー/精密機器用トレー/液晶トレー/光学用部品トレー/基盤トレー/OA機器トレー/医療用品トレー/自動車用部品トレーなど

化粧品・雑貨用トレーの事例

画像引用元:マツバ技研工業株式会社株式会社ムラヤマ包装株式会社小川成型社

 

真空成型トレーは、化粧品の見栄えを良くする素材や色味が選べるため化粧品のパッケージや梱包トレーとして使用されています。

また、ビン製品やデリケートで高価な化粧品も安全に収納し、商品の破損などを低減することができます。

化粧品・雑貨では、真空成型によるブリスターパックもよく使われています。

詰め合わせセット商品トレー/化粧品のテスター用トレー/化粧品パレット/ファンデーション用リフィールケース/化粧品の中仕切り/化粧品用リフィール容器など

真空成型で作られるその他の製品事例

真空成型で作られる製品には、トレー以外にも自動車部品や販促用品などがあります。

自動車部品

画像引用元:植木プラスチック株式会モノマド真空成型・圧空成形.com

 

自動車のフロントやバンパー、メーター類やダッシュボードのインパネなどの大型部品や車内部品、バイク部品なども真空成型によって生産されています。プラスチックを効果的に使うことで、意匠性を高めつつ、軽量化を図ることができます。

販促用品

画像引用元:株式会社吾嬬製作所アキュア

 

製品の凹凸と印刷をぴったりと合わせる「印刷成型」という技術では、非常に繊細に立体感を再現することができます。製作の際には印刷と成型のわずかなズレも許されない、高度な技術が必要とされます。本物と見紛うばかりにリアルに再現された印刷成型品は、軽く丈夫で運搬もしやすく、本物の代わりに店頭で商品の魅力を最大限に伝えてくれます。立体的な商品見本やPOPなどの販促用品に最適です。

 

このように、真空成型トレーは、印刷はもちろんのこと透明や緑色、黒色、青色などトレーの色味も選ぶことが可能です。さらに、トレー表面に高級感溢れるベルベット風の起毛を施したり、フワフワの発泡素材を使用するなど、製品の用途に合わせて最適なトレーの質感に仕上げることができます。電子部品や精密機器用のトレーには、静電気が帯電しにくい表面処理の素材を選ぶことも可能です。

多品種・少量生産に対応しやすい真空成型は、BtoBのトレー・パッケージはもちろんのことBtoC商品にも幅広く採用されています。

真空成型トレーのメリット・デメリット

真空成型トレーの概要や製品事例が分かったところで、メリット・デメリットについて見ていきましょう。(射出成型との比較です。)

真空成型トレーのメリット

  • 小ロット(1個から)生産できる。
  • 生産数量により木型でも生産可能。最適な金型の素材が選べるため、納期短縮・コストダウンにつながりやすい。
  • 凸型もしくは凹型の金型を作れば成型が可能。
  • 射出成型※に比べコストが1/6〜1/10程度と安い。
  • 試作してからのカスタマイズ・調整が容易。

真空成型トレーのデメリット

  • 深いトレーの成型がしづらい。
  • トレーの肉厚を均一にしづらい。
  • 射出成型※に比べ細かい精度が出にくい。
  • 素材によって重量物を入れるには、適さない場合がある。
  • 衝撃に対してあまり強くない。

※射出成型…溶かしたプラスチックなどの材料を金型に流し込み、冷却・固化させる成型法。

 

真空成型は、製品やロットにもよりますが、簡易な金型でも生産できるなど、初期費用が安く製作期間が短いというメリットがあります。また、小ロットはもちろん大量生産にも対応できます。

一方、プラスチックシートを引き延ばして成型するため深い凹凸を作れない場合や、温度変化で微妙に寸法が変化するため射出成型に比べ精度が出にくいことがあります。

製作所や工場にトレー生産を依頼する場合には、前もって精度の確認や製品に最適なトレー形状を相談すると良いでしょう。

「真空成型トレーを見積り依頼する際の注意点」はこちら >

真空成型トレーに使用される素材

真空成型トレーに使用される主な素材は以下の通りです。

PS(ポリスチレン)

成型温度の範囲が広いため成型しやすく、コシが強く固い素材で硬質で変形しにくい。温度変化に弱く冷凍や高温での使用ができない。割れやすいので保管時や運送時に注意。油、こすれに弱い。(耐熱温度約70~90℃)

PP(ポリプロピレン)

衝撃吸収性に優れ割れにくく、耐寒・耐熱性がある。ゴム質を多く含むため、柔らかめの仕上がり。収縮しやすく反りやすいため寸法精度が出しづらい。伸びにくいため、深さがあるものには適さない。(耐熱温度約100~120℃)

PET(ポリエチレンテレフタレート)

高い透明性があり、再生材が調達しやすい。PSに比べ割れにくく、PPに比べ成型しやすい。耐寒性が低いので冷凍には適さないうえ、耐熱性が低く熱に弱い。(耐熱温度約60~70℃)

PVC(塩化ビニール)

高い透明性があり、成型しやすい。耐薬品性に優れているので水回りに使用される。低温で燃やすと有害物質が発生する。※国内での使用制限は無いが、EUなどでは使用が制限されている。(耐熱温度約60~80℃)

SCS(スーパークリーンシート)

導電・帯電防止インキがコーティングされているため静電気が起こりにくい。電子部品トレーに最適。

ABS樹脂

硬度があり、耐衝撃性に優れ加工しやすい。表面に塗装、メッキ、印刷等が施しやすい。

 

この他にも、真空成型に特化している製作所や工場では、製品や用途に合わせて最適な素材を提案してくれますので相談してみると良いでしょう。

また、工場や製作所によってはペットボトルをリサイクルして作られた再生シートや、再生可能な有機性資源を配合したバイオマスプラスチックなど、環境に配慮した素材でもトレーを生産することが可能です。

SDGs(持続可能な開発目標)施策の一環として、地球環境に優しい素材でトレーを生産することにより、企業価値および商品価値を高めることにも繋がりますので、再生資源でのトレー生産を検討してみるのも良いかもしれません。

真空成型トレーに使用可能な環境対応素材一覧ダウンロードはこちら>

真空成型トレー完成までの流れ

実際の真空成型トレーの生産にはどのような工程があるのでしょうか?製作期間の目安なども合わせて見ていきましょう。

真空成型には凸型または凹型の金型が必要です。金型製作期間は、大きさにより異なりますが約20〜30日かかります。

試作品発注後、約1週間前後で試作品が完成しますので、微調整や精度の確認を行います。

試作品の調整期間や製作数量により納期は異なりますが、金型完成後、約2〜4週間程度で納品となるのが一般的な流れです。

■真空成型の流れ

①プラスチックシートを加熱する。

②プラスチックシートを軟化させる。

③金型とプラスチックシートの間の空気を吸引し真空状態にして、型に密着させ成型。

④冷却および真空解放し、成型品を取り出す。

⑤成型品をカッティング(トリミング)して完成。

金型や試作品の製作期間や納期は、製品の大きさや印刷の有無、依頼する製作所や工場によって異なります。規格品トレーの場合は金型や試作品の製作が必要ありませんので、よりスピーディーに納品することができます。

 

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真空成型トレーを見積り依頼する際の注意点

真空成型トレーの生産を製作所や工場に依頼する際には、事前に複数社に問い合わせ相見積りを取られることでしょう。

手間なく精度が高い見積りを出してもらうには、トレーの用途やロット数、希望コストだけでなく、これからご紹介する以下4つの点を製作所や工場に伝えると良いでしょう。

1.収納する製品について詳しく伝える

収納する製品によって、トレー表面に加工が必要な場合や最適な素材が異なります。また、製品の重さや収納点数によってもトレーの構造が変わります

製品について伝えておくと良いこと

・製品自体の形状・材質・重さ・大きさ

・製品収容の向き

・セット部品の収納があるか など

2.トレーについて詳しく伝える

トレーについて、コストやサイズ、必要な厚みや材質など、わかる範囲で詳しく伝えましょう。

希望するトレーについて伝えておくと良いこと

・希望のコスト

・トレーのサイズ

・トレーの厚み

・トレーの強度

・希望の材質

・嵌合性の高さ

・トレーごと展示、陳列されるか

・トレーに印刷が必要か など

3.トレーに必要なマスの数を伝える

1枚のトレーに何点製品を収納するかによって、トレーに必要なマス数が異なります。マスの数や形状によっても金額が変わります。

トレーのマスについて伝えておくと良いこと

・最適なマスの数(製造ロットや納品ロット、工程管理上の最適な数)

・マスの形

・マスの深さ など

4.トレーの収納方法について伝える

複数のトレーをコンテナに収納し運搬する場合は、運送コストを抑えるためコンテナに合った最適なトレーサイズにすることが重要です。また、コンテナを重ね積みする場合は衝撃耐性のある素材を選ぶ必要があります。

トレーの収納について伝えておくと良いこと

・トレーを使用するシーン

・トレーを入れるコンテナ等のサイズ

・スタッキングする予定があるか など

見積りの精度は、製品情報や希望コスト、トレーの厚みや素材、用途などあらかじめ提供する情報の精度によって大きく変わります。

相見積りをスムーズに、より正確な金額を把握するためには出来る限り詳しい情報を伝えると良いでしょう。

また、工場によっては規格品トレーや製品に最適な素材や厚み、表面加工などを提案してくれるところもありますので、見積り金額のほか提案力の有無を比較してみるのも良いかもしれません。

まとめ

今回は、真空成型トレーの特徴や事例、使用可能な素材やメリットのほか、真空成型トレーの見積りを依頼する際の注意点についてご紹介しました。

真空成型は、コストが安く小ロット・多品種に対応しており、スピーディーに仕上がるため、食品用/農業資材/電子部品・精密機器・医療用品/化粧品関連などのあらゆる分野において、梱包用、輸送用、納品用、保管用などの幅広い用途で使用されています。

 

このように、運んだり保管することはもちろん、現場のカイゼンにも役立つトレー。貴社の商品・製品やご利用シーンに、より適したトレーを検討されてみてはいかがでしょうか。

 

吾嬬(あずま)製作所では、年間150種以上の真空成型品を製造しており、お客様のご希望予算や製品の特徴、用途に合わせて最適なトレーのご提案が可能です。

「低コストでトレーを生産したい」

「トレーの納期を早めて製品を早くリリースしたい」

「1枚からオーダーメイドでトレーを作りたい」

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という方はぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

 

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