業界:理化学業界
株式会社夏目製作所様
40年続く定番商品のパッケージを大幅リニューアル
お客さまも社員も快適になる改善
※約40年間にわたって使用してきた従来の紙袋。
※耳標は、1列25個が紙製の芯材(軸)に連なっており、この一列が1セットとなる(この写真では3セット)。
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※改善された耳標パッケージ。20セットが整然と収まっている。
夏目製作所様は、1946年に創業された基礎医学器械、薬学研究器械、 実験動物管理飼育機器、理化学機械などの製作・販売を行う企業です。 大型の精密機器から小さな消耗品に至るまで、約700種類にも及ぶ幅広い製品を取り扱っています。 その一つに、動物の個体を識別するために用いる「耳標(じひょう)」という商品があります。 対象動物の耳に取り付ける耳標は、動物の大きさによって製品の大きさも異なりますが、 中でもラットやモルモット用の耳標は、ひとつひとつが非常に小さな製品であるために、 その管理や発送で苦労することが多かった商品だったそうです。 そしてこの耳標の専用パッケージ製作を、吾嬬製作所にご依頼いただきました。 紙の小袋に注文個数を手作業で詰めていた状態から、専用の真空成型パッケージへと 大胆に改善したその経緯と、課題解決までの歩みをお届けします。
夏目製作所
小川チーフからひとこと
「パッケージを改良したいが真空成型のパッケージの知識がなく、
どうしたものかと困って東京都の中小企業振興公社の方に相談したところ、
『吾嬬さんなら、きっと快く相談にのってくれますよ』とご紹介いただきました。
とてもスムーズに連絡が取れ、私たちが改良したいと思っていた以上のことを成し遂げてくださり、
そしてとても丁寧にご対応していただきました。これまでの問題点が解決する本当に便利なものを作っていただいて、
とても感謝しています。そして実はこの後、新製品であるトレーの開発にも、大きなお力添えをいただきました。
またご相談させていただきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」
松村社長からひとこと
「小川様は、まず弊社のものづくりに対する考えやスタンス、生産環境などを理解しようと、工場に足を運んでくださいました。また、夏目社長は『私たちは協力会社様のお知恵を借りている』と、一業者ではなく、人と人としてしっかりと関係を築いてくださる方です。夏目製作所様のコンシェルジュサイトに掲げられている『まずは、夏目製作所に聞いてみよう』という言葉には、お客様のどんなお悩みにもお応えしたいという真摯なお気持ちが表れていると思いますし、そのご姿勢には、私どもも非常に共感するところであります。お客様のニーズを満たし、かつ製品として成立するコストバランスを考えた最適なご提案ができるよう、私たちもより一層、技術と提案力を磨いて、お応えしていきたいと思います。」
課題解決のポイント
- 夏目製作所様から「耳標」のパッケージを扱いやすく使いやすいものへ改良したいとご相談を頂いた。現在のパッケージで困っている点を丁寧にお聞きすることで、その全てを解決するパッケージ案を創り上げていった。
- 「ここに困っている」「こんな機能が欲しい」という具体的なお困りごとやアイデアがはっきりとあったため、ゼロからの作成でもイメージが掴みやすく、こちらの持っている技術力も存分に発揮することができた。どんどん意見を言ってもらえたことが、私たちにも助けとなり、そしてご満足を頂けるパッケージ開発に繋がった。
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具体的には、
①一列25個の連番になっている三角形の「耳標」の崩れを防ぐ、ピッタリと収まりのよい、同時に取り出しやすいパッケージにする。
②しっかりと嵌合しつつも開けやすい蓋をつけ、耳標が散乱しないようにしたい。
③「耳標」に記されている連番の数字が一目で分かるようにする。
④パッケージを安定して積み重ねられるようにする。
⑤積み重ねても凹まない強度が欲しい。
⑥パッケージの大きさは、郵送時に扱いやすいゆうパックなどに収まる大きさにしたい。
⑦耳標納品後の検収をスムーズにするため、商品に掛からない形で型番ラベルを貼るスペースが欲しい。
⑧パッケージに夏目製作所のロゴタイプを効果的に入れたい。
これら全てに対応することが私たちの課題でした。2回の試作を経て完成。積み重ねる蓋つきのパッケージについては、以前ユニット部品トレーを設計をしたことで多くのノウハウがあったため、自信を持ってご対応できた。
ご依頼の背景
夏目製作所のロングセラー商品である「耳標」は、海外からの輸入製品で、これまでは紙袋に注文個数を詰めて送付されていました。問題は、1列25個を1セットでまとめているその芯材(軸)の部分が紙製で強度がなく、注文個数を袋詰めするときなどに芯材や耳標そのものが歪んでしまったり、時には耳標がばらけてしまうことがあったそうです。 そして一度ばらけてしまうと、個数確認はもちろん数字の連番の確認などを含めて、非常に手間がかかるであろうことは想像に難くありません。
長らくこの形態であったため、『こういうものだ』とやってきたものの、会社に若いメンバーが増えたことで積極的な意見が出始め、夏目製作所の『お客さまによりよいものを、よりよく提供する』という考え方からも『見直しが必要だ』という結論に繋がりました。 そして見直し案にはお客様目線を積極的に取り入れて改善していこうという取り組みが生まれ、まずはこの耳標のパッケージから改良しようと決断されました。
お客様の課題
小さくバラバラになりやすい商品である耳標を、安定感のあるパッケージで扱いやすく使いやすいものへと改善したい。その際、実際に耳標を使うお客さまに、 より便利で使いやすいものになるようにしたい。
現場(工場)の課題
これまでの紙袋から透明の真空成型のパッケージにすることで、耳標のセットを崩れにくく扱いやすくし、またそれらを均等に並べることで個数確認や連番確認を容易にする。また、中身を隠さない位置に型番ラベルを貼れるようにする。パッケージは中の三角形の耳標が動かずしっかり収まると同時に取り出しやすい形状とする。効率的な収納や管理のためにパッケージを積み重ねることを想定し、積み重ねても崩れたり凹んだりしない十分な強度と安定感を持つものとする。納品方法も考えたサイズ感とする。
選んだ理由:真空成型の技術について詳しくない中、工場訪問時に丁寧に説明し、話を聞いてくださった。引き出しが多く、この先さまざまな相談ができそうだと頼もしく感じた。
小川チーフ 「耳標はほぼ創業時からの取り扱い商品で、ばらけてしまった時の個数確認やナンバリングの連番抜けがないかの確認作業が本当に手間でした。1列25個なんですが、これが年間大体30万ナンバーくらいまで出るので、毎年本当に大変だったんですよ。 また、そもそも紙袋で送付していたため、お届け先でのお客様の使いにくさなどもあったと思います。我々の時間短縮や効率化だけではなく、使い続けてくださっているお客様のためにも改善したかった。しかし、パッケージの知識がない私たちには、具体的にどうしたらいいのかがわからない。
共通の知人を通じて松村社長をご紹介いただき、ご相談した時に、松村社長は『現在の課題となっていることを、どんどん言ってください』と仰ってくださいました。 そして松村社長とお話をする中で、自分たちがどんなパッケージを欲しているのか、具体的な案がまとまっていきました。そこから2回の試作を経て理想的なパッケージが完成。さらに、パッケージには商品ラベルを貼るわけですが、ラベルで耳標が隠れないようにあえて余白を設け、その余白には弊社のウサギのロゴマークも真空成型で入れていただいたんです。
松村社長は、はっきりと課題があった方が作りやすいと仰り、その全てに対応して下さり、そして課題をクリアするのはもちろん、完成品を見て思わず嬉しくなるようなパッケージを作ってくださいました。本当に感謝しています」
管理効率・輸送効率・作業効率大幅UP そして社内モチベーションもUP
小川チーフ:「耳標がバラバラになるという恐怖がなくなり(笑)、とにかく個数管理、ナンバリング管理がしやすくなり、ご注文から発送までの流れも早くなって、パッケージを改善して本当によかったと思っています。注文してくださる大学などの現場からもクレームをいただくようなことが少なくなりました。当たり前のことが、やっと当たり前にできるようになったということだと受け止めています。
また、実はこの耳標がご縁となり、松村社長には、大学研究室で使用する新たなトレーの開発にも携わっていただき、新製品としての商品化が実現しました。
大学とのコラボで商品化ができたことは、私たちにとって大きな実績。お客様のさまざまなお困りごとに応えるため、これからもご相談させていただきます」
夏目社長:「「実は耳標のパッケージを変えたあと、社内の雰囲気が少し変わったんです。『いろいろなものを、今までよりも、よりよくしていこう』というムードが高まっていったんですよね。
耳標のパッケージはそのシンボル的なものに、そして新たな皮切りになったのではないかと思っています。
そういう意味で、パッケージ改善以上の価値もあったと思っているんですよ」
お客様データ
夏目製作所様は、動物実験関連機器を総合的に製造・販売するメーカー。1946年の創業以来、クライアント様や研究に携わる先生方よりさまざまなアイデアやご依頼を受け、形にしてきた製品はおよそ700種に及ぶ。 「ライフサイエンスの未来とともに~人と動物に優しいものづくり~」を企業理念として掲げ、「地球の環境そのものをサスティナブルなものにするために努力し、全ての生き物が豊かな暮らしを送れる社会」を目指している。 相談しやすい・分かりやすい・使いやすいなど、「〇〇やすい」をテーマとした、研究者による実験の成功をお手伝いする【コンシェルジュサイト】では、 「まずは夏目製作所に聞いてみよう!」を合言葉に、あらゆるお問合せに積極的に対応している。
代表取締役社長 夏目知佳子様:人や社会との繋がりを大切にしながら、時代と共に成長してきた夏目製作所。研究者に寄り添い、動物への感謝の気持ちを形にしていくべく、動物福祉と実験の精度向上への貢献を大切にしている。また、従業員一人ひとりの成長こそが会社の成長ととらえ、やりがいと誇りを持って働ける環境づくりの実現を大切にしている。
チーフコーディネーター 小川哲平様:長年の営業経験を経て大阪の拠点のトップを経験。視野の広さや戦略立案の力が買われ、社内の課題を一手に引き受け、解決に向けてひた走るプランニングチームを率いることとなる。実験動物2級技術者でもある。